日韓トンネルを巡る、日韓の意識の違いーアジアハイウェイを模索する(3)
※今日のテーマは何気にナイーブな話ではあるので、「お、こんなものもあるのか」程度に読み流してもらえると有り難い。
昨日のブログで紹介したアジアハイウェイ1号線。
ここに一箇所だけ、結構と言うか明らかに浮いている区間が存在する。
福岡ー釜山の「フェリー」区間である。
現状として上のような旅客輸送船が運行されている訳だが、やはり「ハイウェイ」と言っておきながら海を使うのは、拡大解釈と言うか、卑怯と言うか、兎角腑に落ちないところがある。
ただ、行政の方もこの無理やりすぎるハイウェイという概念に対して、何も対策を練ってこなかった訳ではないようだ。
その一番の根拠が、戦前から提案されては消え、を繰り返している「日韓トンネル」の建設に関する議論であろう。
今日は、かなりナイーブではあるが、せっかくアジアハイウェイについて調べているからにはまとめざるを得ない、このネタを扱っていきたいと思う。
ある土木系学生が日韓トンネルを知ったきっかけ
自分は大学で土木工学を専攻している。
細かい話をすると、正確には土木工学ではなく社会基盤学という単語を使うのが正しいのだが、如何せん後者で説明したところで「何それ?」となって誰にも理解して貰えないので、自己紹介の際には「土木を勉強している」と言うようにしている。
そんな自分の学科には、日韓台の三つの大学にて土木を学ぶ学生が集い、数日間交流する行事が存在する。
基本的な目的は「交流による相互理解」なのだが、単純に遊んだり観光したりしているだけではなく、一応学術的な交流、すなわち各国でどういう研究が為されているのかについてまとめて発表する場が設定されている。
そして、この学術交流の場では、どの国でも当たり前にやっているような研究ではなく、各国のユニークネスが反映される。
例えば日本の場合は、自然災害リスクが高い点などを含む話題などで、自分たちは去年は西日本豪雨の被害と土砂災害についてまとめるなどした。
そして、この学術交流の場にて、韓国の学生が発表したのが、日韓トンネルに関するトンネル工事の話題だった。
引用:
日本側のメンバーはこんな話など、授業では勿論、NHKでもYahoo!ニュースでも見聞きしたことがなかったので、皆で驚きとともに目を合わせた記憶がある。
ただ、正直なところ、この時は韓国の学生が、二国間に渡るネタを何とか見つけ出しただけで、韓国が日韓トンネルについて真面目に検討している訳ではないと勝手に結論付けていた。
ただ、どうやら違うことに去年の末、知った。
世論調査された「日韓トンネル」
去年の12月、このような韓国の世論調査に関するニュースがあった。
Yahoo!ニュースでもトップ欄に出ていたので見た人もいるかもしれない。
仮に日本でこのような世論調査をしたと仮定する。
しかし、そもそも日韓トンネルなるアイデア自体が浸透していないので、理由づけはどうしても主観に依存してしまい、ただのネトウヨの台頭の場でしかなくなるような気がする。
例えば、
まあ何となくではあるが、この辺が決まり文句みたいなもので、自然と後者が増えるのではないのだろうか、少なくとも個人的にはそんな気がする。
それゆえ、
この記事を見つけて読む間際まで、どうせ韓国でも殆ど日本と似た感じで、世論調査の意義自体が無いような空虚なものなんじゃないかと勝手に思っていた。
しかし、結構状況が違うことは読んですぐ分かった。
勿論、ネチズンの反対意見として、
- 日本が過去の歴史を反省しているならまだしも、堂々と竹島の領有権を主張しているのに賛成はできない
- 日本が建設費を全額負担しても駄目
等々があるようで、まあこの辺は上の文章の単語が「日本→韓国」に変わるだけで、日本でもほぼ同じだと思う。
ただ、反対意見として全国区の調査で一番多かったのが、「両国の歴史的・文化的背景の複雑さ」ではなく、「経済的効果が特にないため」というのは意外だった。
日韓トンネルはその距離の長さ(約300km。ちなみに東京湾アクアラインは14km、英仏海峡トンネルは陸上部込みで約50km)に由来する膨大な建設費用から、産業の活性化等による利益を考慮しても、費用対効果は著しく低いという算出が、韓国政府によって2011年に示されている。
そんな事実を知っていての上の回答結果なのかどうかは分からない。
ただ少なくとも、「複雑な関係性」よりも「乏しい経済的効果」が上位回答に来ている時点で、トンネルの存在価値について主観やナショナリズムを排した議論が日本よりもある程度積極的に行われていると言えるのではないのだろうか。
そんな気がした。
建設自体を考えない日本と、建設を前提とする韓国?
ただ調べてみると、一応日本でも日韓トンネルの経済効果に関する研究は行われているようだ。
この研究は福岡の西南学院大の先生が行なっているものであり、また日韓トンネルによる大きなメリットの一つとして、九州地方の観光を中心とした産業活性化がよく指摘される。
このことを踏まえると、もしかすると九州では日韓トンネルに対する経済効果等の客観性のある検討が、より本格的に行われているのかもしれない。
が、重要なのは、上の韓国の世論調査では、釜山と全国レベルの両方の視点で行われ、「経済的効果の乏しさ」が反対理由の上位に来たのは、釜山ではなく全国レベルの方であり、逆にむしろ釜山の方が、「複雑な関係性」が反対理由の上位に来ているという点である。
このことは、韓国では日韓トンネルに対して賛成意見が強く、最近は大統領含め積極的であるから、逆に文化的衝突等のデメリットについての議論が消極的であることについて、国境を接することとなる釜山で懸念が示されている段階にある、と言えるのかもしれない。
そして、この辺りに、日本と韓国の日韓トンネルに対する認識の違いがあると言えるのかもしれない。
では、逆にどうして韓国はここまで日韓トンネルに対して積極的なのか。
正しい答えはないに等しいが、少し調べてみて明日のブログでまとめられたらと思う。