「爆弾」を抱え続ける、ミャンマー東部国境ーアジアハイウェイを模索する(5)
数日前のブログにてアジアハイウェイ1号線(AH1)に関して、都合よく世界が足並み揃えて協調できない時間がかなり長く続いていることで、AH1のニーズや期待感のようなものが低くなってきているのではないか、ということについてまとめた。
このブログでも紹介しているが、最近になってようやく国際社会との協調路線に舵を切った国がある。
そう、ミャンマーである。
実を言うと、明後日からミャンマーに行くので、とりあえず「アジアハイウェイ」シリーズのとりあえず一旦の終わりとして、ミャンマーのアジアハイウェイ事業について二日に分けてまとめていきたいと思う。
ミャンマーってどこ?
「最近ミャンマーをよく聞くけど、どこそれ」
「ミャンマーとインドってどっちがタイの隣?」
自分の周りでもこのような質問を時々投げかけられる。
時々と言うか、結構頻繁に、である。
ので、とりあえずミャンマーの地理について簡単に紹介したい。
引用:
ミャンマーはASEANに所属する国の中で、最西端に位置していて、西にインドとバングラデシュ、北に中国、東にタイとラオスに接する。
ミャンマーは昔から今まで、国境付近で様々な問題をはらみ続けている。
今日はその中でも、ミャンマー東部、中国とラオス、そしてタイとの国境地帯を巡る様々な混沌について軽く考えてみたい。
歴史ある「麻薬密造地帯」
まず昔から悪名高く言われ続けているのが、ミャンマー、タイ、ラオスの三ヶ国が交わる、
「黄金の三角地帯(ゴールデン・トライアングル)」
と呼ばれる麻薬密造地帯である。
現在、タイとラオスでは製造が落ち着き、逆にその知名度と、「三カ国が交わる」という特異性を活かして観光産業の活性化を目指している。
が、Wiki情報によるとミャンマー側では逆にそこで落ちた供給量を賄う形でさらなる増産を行い続けているところもあるようだ。
しかし、このソースはかなり古めかしく、JICAをはじめ、多くの国際機関が製造の中心であるシャン州北部に支援を行なっていると言う話をよく聞くので、現状は分からない。
黄金の三角地帯に一番近い陸路通過が可能な国境として、ミャンマー(タチレク)・タイ(メーサイ)国境がある。
が、道路整備が不十分であることや、独立志向の強い山岳ゲリラ等のリスク等が懸念される為、少なくとも第三国の人間には国境から内陸部への通過は許可されていない。
引用:国土交通省HP
ちなみに余談ではあるが、世界にはもう一つ大きな麻薬密造地帯として、パキスタン、アフガニスタン、イランにまたがる「黄金の三日月地帯(ゴールデン・クレセント)」が存在しているのだが、ちょうどこの地帯はアジアハイウェイ1号線の走る地帯と被っているのが興味深い。
引用:
・The Afghanistan Golden Crescent Drug Trade
・国土交通省HP
(特に2枚目はかなり見辛いが、ぜひ比較してほしい。)
悪名高き「ワ州連合軍(UWSA)」
上の陸路通過可能ポイントのうち、現在でも第三国の人間の通過に行政からの特別なパーミットを必要とされるのが、ミャンマー・中国国境である。
この地域も麻薬製造が盛んであることが一番の原因であるのだが、ゴールデントライアングルよりも、隣接する中国とミャンマーの関係性や文脈の共有のようなものが著しく強い。
その典型例が、題名にもある、ワ州連合軍である。
この名前に聞き覚えがある人がいたら、作家・高野秀行氏のファンであるに違いない。
彼はアヘン密造でも名高いワ州に滞在し、実際に現地でアヘン製造の現場に立ち会いながら書にまとめた、ただのツワモノである。とにかくすごい。
この本でまとめられているのは、1995年の話である。
が、UWSAは依然ツワモノであることは下の動画を見れば一目瞭然であろう。
難民を抱え続けるAH1区間
上の二つはかなり特殊な事例であることに変わりはないが、AH1を担う、ミャンマー(ミャワディ)・タイ(メーソット)国境でも依然課題は残っている。
まずこの地域はミャンマーが第二次世界大戦終戦後に独立を果たした当初からビルマ族の統治を嫌い、独立傾向が強かったカレン州(現・カイン州)に属していた。
それゆえ、10年ほど前まではゲリラとビルマ軍の戦闘が繰り広げていて、国境が第三国の人間にも解放されるようになった2013年以降も、小規模ながら衝突が発生している。
また、そのような長引く衝突が原因で、ミャンマー側から避難してきた難民がタイ側のメーソットに多く存在している。
アジアハイウェイが開通し、たとえ経済成長が果たせたとしても、このような辺境の民まで視野を広げると、依然多くの課題が山積みであることは間違いない。
明日はさらなる問題を持っているミャンマー西部国境についてまとめたい。