はざまを彷徨う

世の中の境界とそのワクワク感についての個人的雑感

故障連発。マンダレー〜カレーミョ17時間バス旅の一部始終ーミャンマー・インドの旅(6)

 

マンダレーから国境を超えてインドのアイゾールに到達するまでの記録は既に英語で下の記事にまとめてありますが、今日からは日本語で振り返っていきたいと思います。

 

borderpass.hatenablog.com

 


 

ミャンマー第二の都市であるマンダレーにはバスターミナルが少なくとも三つは存在している。ヤンゴンやその他有名観光地へと向かう大型観光バスは基本的に中心部から南に数km離れた所にあるバスターミナルがメインに使用される。

それに対して、クレイジージャーニーでお馴染みな「奇界遺産」佐藤さんの写真集にも取り上げられている大仏で有名なモンユワは西部のThiri Mandalar Highway Bus Stationが起点となる。今回の目的地であるカレーミョ行きのバスもここからだったので、とりあえず宿からバイタクで移動する。

 

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 Sited from;

『奇界紀行』刊行 | 奇界

 

「バスターミナルは西側だよ」としか聞いていなかったが、奇しくも先日のiPhone蒸発事件にてお世話になったツーリストポリスのすぐそばにあった。入り口でバイタクのおっちゃんにGrabであらかじめ示されていた料金(忘れたがそんな高くない)を支払う。

バスターミナルはヤンゴンから来た時に使った南部ターミナルよりも相当小さい。写真の建物を中心に囲うようにバスとバン乗り場が並んでいるのだが、ローカル色がかなり強い。

 

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Thiri Mandalarであって、Mandalayではない

 

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相当年代物の千歳市スクールバス。外ヅラだけ変えるところもあるが、ここはそのまま。

今回向かうカレーミョへのバス乗り場は入り口を入って左奥にあった。入り口にいた中年のおっちゃんにバックパックを勝手に背負われて案内されたので例の如く金銭を要求されるものだと危惧していたのだが、バックを置いて乗り場の従業員に話を済ませるととっととどっかへ行ってしまった。

やはりここは通常の東南アジアとは違う、そう思った瞬間だったりする。

バスは中古の中国製バス。それでも上の千歳市スクールバスとかに比較すると、外ヅラからしてある程度信頼を置いても良さそうだ。

しかし、いざ乗車してみるとその信頼感もわずかに揺らいだ。内装がしっかりミャンマー風にアレンジされているし、何故か外ヅラに比べてやけにボロさがにじみ出てる。そして、恐らくこのバスは旅客輸送以外にも物資輸送としての役割も果たしているのだろう、バスの車内のうちの半分は山積みの段ボール箱が満たしていた。

しかし、以前ベトナムホーチミンからカンボジアプノンペンへと向かうバスもこれと同じような感じだったし、その時は特に問題なく走りきってくれたので、依然今回のバスに関しても大丈夫だろうと、特に疑ぐる必要もなく、素直にそう考えていた。

 

甘かった。

 

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めちゃ綺麗。少し感動。

バスはきちんと定刻通り3:00に出発。

ミャンマーの長距離バス名物と言ったところだろうか、安全祈願としての意味合いから、乗車後間もなくしてお経動画が流れ始める。

長距離バスではお経動画の後、大抵訳の分からない、パターンが固定化された、見るに耐えないコメディ映画が、爆音ととともに垂れ流され続けるのだが、自分は比較的お経のような単調な「音」が好きだし、何より爆音コメディが苦痛でしかないので、コメディなど流さず無限にお経を流し続けて欲しい、というのが個人的希望である。しかし、スマホを持っている「ナウいミャンマー人の若者はきちんとイヤホンを使って自分だけの娯楽を楽しんでいるし、スマホを持っていない中年のおっさん客は大抵コメディ映画にしっかりと見入っている(し、しっかり笑っている)ので、一外国人の希望など言う訳にはいかない。郷に入っては郷に従え、である。

 

乗車後20分ほどして、生憎お経が終了し、コメディが始まる。主演は一昨年ミャンマーに訪れた際に観た映画と同じ俳優だ。そして相変わらずつまらない。言葉は全く分からないが、理解してなくてもつまらなさが滲み出ている。

 

如何しようもないので、新たに購入した中華スマホに出発前慌ててダウンロードしておいた数曲を聴きながら早めに眠りにつく。

それから1時間半ほど経って、バスが初めて休憩の為に停車した。

ようやく陽が沈み始めた頃だったが、ドライバーに聞くとどうやら早めの夕食とのこと。ミャンマーに来てからこれと言ったミャンマー料理を食べていなかったし、カレーミョから先はまた文化圏が異なっていることだろうから、折角なのでここでしっかりと食べていくことに決めた。

 

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ミャンマーに限らず、アジアの途上国の幹線道路沿いには長距離移動者向けの広めのレストランが多く経営されている。

席に着くなり、英語ができる若めの男性スタッフが来てメニューを教えてくれた。安パイのチキンカレーがあったのでそれを頼むが、チキンカレー以外のサイドメニューと呼ぶべきだろうか、兎に角付け合わせ料理が大量に頼まれる。そう言えば以前バガンでローカルレストランに入った時もこのような出され方だった気がする。その時はグループだったし、何よりあまりの暑さで食欲が失せかかっていたのでほとんど意識していなかったが、一人で来るとその量の膨大さにただただ呆然とする。(写真をなぜ取らなかったのか、今でも不思議なくらいだ。)

しかし、周りのミャンマー人を見る限りでは、これらを全部食べる必要は無さそうでとりあえず一安心。ご飯も櫃に入った状態で給仕され、ほぼほぼおかわり自由に近かったので、今後予算的にも地域的にもまともな食事に有り付けない可能性も考えて、ここで食べれるだけ食べておく。味もやや警戒していたのが馬鹿らしく感じた位には美味しかった。ここで飲んだミャンマービールも冷えていて美味しかった。料金はトータルで3500kyatだった。
 

午後6時。食事を終えて、バスから離れてぼーっと夕日を眺めていたら乗客の若めの女性に出発だと急かされ、慌てて乗車する。エンジントラブル未遂を繰り返しつつも、途中途中でトイレ休憩兼修理を挟みながら何とか進み続ける。

そして夜8時くらいからだろうか、だんだんと道路整備がまだ終わっていない区間に差し掛かる。どうやら山越えのようだ。

しかし、このバス、物資輸送を兼ねているからか荷重に対して馬力が全く足りておらず、坂道発進にかなりの難がある。運転手の補助的な男が逐一輪止めをセットしながら、数メートルずつ進んでは止まるを繰り返していく。

 

9時半ごろ、ようやく坂道をある程度攻略して、一旦休憩に入るのかと思いきや、本格的な修理が開始される。

場所は辺鄙な山道。月光がいい感じに照らしてくれていて、星空も綺麗で、最初の頃はその美しさに見とれている余裕があったが、修理の時間が経つにつれてすることもなくなり、段々と一抹の不安のようなものがよぎり始める。

こんな所で修理できなかったらどういう対応になるのだろうか。レッカーなどという概念は絶対存在しないだろうし。そういう体験をしてみたさも若干あったが、しかし今回に限っては時間的な制約もあるし、なるべく予定通りに旅を進めておきたいという気持ちもあった。まあ、兎に角身を委ねる以外術はないのだが。

 

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修理中にフラッシュを焚いて写真を撮ってみた。

色々と考えているうちに停車して1時間半が経ったくらいだろうか。停車した時には死ぬほど弱々しかったエンジン音がかなり元気を取り戻していた。まだまだ山道は続きそうで、もう一度壊れる気しかしなかったが、運転手たちは安堵の表情を浮かべてめちゃ喜んでいた。事実、運転再開後は助手セレクトの明るい音楽が車内に響き渡った。

 

11時半頃に大きめの休憩所に到着。一応トイレ休憩のようだが、相変わらず運転手たちはエンジンをいじくり回していた。それにしても夜空が綺麗だったので、逐一壊れては直すを繰り返してもらった方が、、、と思ったりもした。

何気に一時間ほど休憩所にたむろしたのち、12時半頃出発。ここで自然と睡魔に襲われたが、ちょくちょくエンジントラブルがあって起こされる。

それにしてもこの手の移動で一番運が試されるのは隣の乗客だ。このバス移動では完全にハズレのおっさんだった。こちらの席に際限なく体を乗っけてきて挙句の果てに上半身を寄せあいながら眠りにつく羽目になった。苦行だった。

 

起きたのは朝7時くらいだっただろうか。相変わらず道の状況は良くないが、この時間帯から働いている地元住民を見るとあーだこーだ言っているのが馬鹿らしく思えた。

ところで、ここら辺に限らずミャンマー全般において、積極的に地元住民を労働力とした道路整備を結構見かけた。自助努力の精神を養うと共に、労働による対価で貧困削減効果があると言われるのだが、この道はアジアハイウェイ構想に含まれる幹線道路である。まだ需要は乏しいとは言っても、今後インドとの貿易が活発になるとすれば、この道を通る自動車やトラックはかなり増加するだろう。果たしてこれでいいのか?とは思った。そもそもアジアハイウェイやインドとの貿易拡大など、念頭に置かれておらず、ただの大きめの農村道路としてしか認識されていないのかもしれない。

 

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途上国の道路整備ではこんな感じのLabour-Based Technologyをしばしば見かける。

何はともあれ、8時すぎくらいになるとだいぶ文化圏を感じさせる街並みになる。どうやらカレーミョに入ったようだ。

そして8時半。カレーミョのバスターミナルに到着。田舎だが結構大きい。少なくとも昨日のThiri Mandalarよりは大きい。

やはりこの街がミャンマー北西部の一大拠点であることがみて取れる。

 

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カレーミョのバスターミナル

 


 

明日はカレーミョでの一日についてまとめたいと思います。